目 的

  1895年にX線が発見されると、X線は短期間の内に診断・医療といった医学に利用されました。それと共に、放射線障害が発生し、問題になりました。そこで、放射線防護の必要性から、1928年にスエーデンのストックホルムで開催された第2回国際放射線医学会議において、国際X線ラジウム防護委員会(IXRP:International X-ray and Radium Protection Committee)が設立されました。その後、1950年に名称を現在の国際放射線防護委員会(ICRP:International Commission on Radiological Protection)と改めました。初期において、放射線は医学領域において主として用いられていましたが、その後原子力発電をはじめ、加速器利用、RIの広範な利用、ウラン鉱山など、放射線の利用が様々な分野に広がり、ICRPが検討する防護の対象もそれにつれて広がってきたことに対応するものでした。  

 ICRPは、放射線影響に関する科学的データや放射線の利用分野・形態、放射線防護・安全に関する技術的水準などを考慮して、放射線防護の基本原則を勧告しています。これらの勧告は、放射線防護の専門家や国の規制当局に読まれることが意図されており、実際、世界各国の放射線利用、安全に関する法律、基準はICRP勧告に基づいて作られています。

 ICRPにおける検討結果はICRP Publicationとして刊行されます。放射線防護の基本原則をまとめた基本勧告はこれまでに5回出されており、最新のものは1990年に出されたPubl.60です。基本勧告に加えて、勧告の内容を検討項目ごとにさらに深めたり、具体的な適用例を示したり、勧告のもととなったデータをまとめたものがPublicationとして刊行されています。

 

写真:ICRP Publication((社)日本アイソトープ協会にて発行)

 

構 成

 ICRPは、主委員会と4つの専門委員会から構成されています。4つの専門委員会がカバーしているテーマはそれぞれ、第1専門委員会が放射線影響、第2専門委員会が誘導限度、第3専門委員会が医学領域における放射線防護、第4専門委員会が委員会勧告の適用となっています。誘導限度とは、基本勧告で与えられた線量限度(被ばくの基本限度)が守れるような、実際の管理の現場に適用が可能な形に導かれたものです(例えば、空気中の放射能濃度限度)。第4専門委員会が行っている委員会勧告の適用とは、先に目的のところでも述べたように、勧告の内容を検討項目ごとにさらに深めたり、具体的な適用例を示したりすることです。

 主委員会および専門委員会はそれぞれ10数名のメンバーから構成されていますが、メンバーは各国の代表という位置付けではなく、専門家として専門分野のバランスを考慮して選ばれています。現在の日本からのメンバーは、以下の表のようになっています。また、任期は4年となっており、2001年7月からの新しい期において予定されているメンバーも表にあわせて示しました。

 

委員会 任 期
主委員会 1997-2001 2001-2005
委員長
R.クラーク(英) R.クラーク(英)
日本人メンバー
松平寛通
(財)放射線影響協会理事長
佐々木康人
放射線医学総合研究所所長
第1専門委員会
委員長
R.コックス(英) R.コックス(英)
日本人メンバー
馬淵清彦
前(財)放射線影響研究所
丹羽太貫
京都大学
放射線生物研究センター
第2専門委員会
委員長
A.カウル(独) C.ストレッファー(独)
日本人メンバー
稲葉次郎
(財)環境科学技術研究所
稲葉次郎
(財)環境科学技術研究所
第3専門委員会
委員長
F.A.メトラー(米) F.A.メトラー(米)
日本人メンバー
佐々木康人
放射線医学総合研究所所長
中村仁信
大阪大学医学部
平岡真寛
京都大学医学部
第4専門委員会
委員長
B.C.ウインクラー(南ア) B.C.ウインクラー(南ア)
日本人メンバー
小佐古敏荘
東京大学
原子力研究総合センター
小佐古敏荘
東京大学
原子力研究総合センター

 


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