「行為」と「介入」は対をなす言葉で、「行為」はそれを実行することにより放射線被ばくを増加させるような人間活動をいい、反対に「介入」は放射線被ばくを全体として低減させるような人間活動を言います。 具体的には、行為は原子力発電やX線診断のような放射線の利用を指すと考えて構いません。一方、介入は事故後の汚染除去やラドン濃度が高い家屋に換気設備を設けることなどが具体例としてあげられます。

 行為と介入を別に定義しているのは、どの程度の放射線防護対策をとるのかを考える場合(すなわち最適化の実施)において比較すべき指標が異なるからです。つまり、行為においては、放射線被ばくにより生じる損害(リスク)と放射線利用により得られる利益(ベネフィット)がバランスするように防護対策のレベルが考えられます。

 一方、介入では介入により回避された放射線被ばくと、介入に伴う費用や社会的負担が比べられることとなります。また、線量限度は行為について定義されており、介入については定義されていないことにも注意が必要です。一般公衆の線量限度は年1mSvとされています。したがって、これから放射線施設を作ろうとする場合は行為にあたりますので、その施設境界の線量は一般公衆の線量限度である1mSvを下回るように遮蔽壁などが設計されなければなりません。

 例えば、原子力発電所の事故により環境中に放射性物質が放出され、そこに住む人々の被ばく線量が年8mSvとなった場合、年8mSvはあまりに高い線量なので介入により線量の低減が図られます。しかし、どこまで下げるかについては線量限度である1mSvが基準とはならず、介入に伴う費用や社会的負担を考慮し決定されます。したがって、土壌からの放射性物質の除去に莫大な費用がかかると判断されれば、例えば2mSvの線量レベルで介入が最適化される場合もあります。


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