低線量全身照射と局部照射の併用によって、主に悪性リンパ腫(リンパ組織にできるがんの一種)の治療が行われています。これは坂本澄彦・東北大学医学部教授(現東北大学名誉教授)らの研究グループが20年以上前から基礎研究を始め、その研究成果に基づき、患者さんの承諾を得た上で、臨床治療を行ってきたものです。基礎研究では、低線量全身照射はがんの治癒率を高め、がんの転移を抑制する効果があることが証明されています。

 臨床で用いられる治療法は、先ず全身に1回当たり10cGy(この線量は通常の放射線治療で用いられる一回線量の20〜30分の1です)を週3回または15cGyを週2回照射し、全身照射から数時間後にがんの局所に200〜300cGyの照射をするもので、これを5週間繰り返す治療法です。  

 下図は、悪性リンパ腫に対する治療結果を示したもので、従来の治療法によって治療された患者さんの生存率に比べて、この治療法で治療された患者さんは高い生存率を示していることが分かります。この効果は、低線量全身照射によりがん患者が失っていたがん免疫が賦活される(免疫力を回復する)ことによることが基礎研究で証明されており、また、臨床的にも免疫の賦活を示すデータが得られています。

(日本放射線腫瘍学会誌 9巻、161〜175頁、1997年)

 


ホームページに関するご意見・ご感想をこちらまでお寄せ下さい。
メールアドレス:rah@iips.co.jp