欒 元 g
NuSTA(台湾科学技術財団)

 台湾北部で1982年に完成した約1万人が居住する1,700戸の大規模マンションであるが、鉄筋コンクリートにコバルト60放射性元素が混入していて、住居内放射線レベルが極めて高いことが1992年に発見された。

 γ線の測定で、明らかにコバルト60によって汚染されていることがわかり、居住初年度の1983年には、最高で1年間1Sv(通常の1,000倍)近く被ばくをした住民がいたことが推測されている。放射線レベルの特に高い部屋に住んでいる人は1,000名程度で、この人達の受けた初年度の平均年間線量は525mSv、つまり通常の約500倍であった。このマンション居住者の1983年頃に受けていた平均年間線量率は約73mSv/年であった。

 マンションの放射線レベルがこのように高いことが発見されたのは完成後10年も経過してからで、原因がコバルト60によることも確認されているので、完成直後はどのようであったかについてはコバルト60の5年あまりの半減期から逆算したものである。もちろん、現在は年間の放射線レベルは1983年当時の1/10以下になっている。

 さて、このマンション居住者のがん死亡者はわずかに7名であり、これは驚異的な値である。なぜかといえば、この台北地域のがん死亡率は年間10-3あまりで、この死亡率から20年間にマンションの住民約10,000人のがん死亡者数を計算すると200名程度ということになるから、これに比べると7名というのはがん死亡者数が5%以下になってしまったということになる。

高放射線マンションの住民の被ばく状況
 
住民数

初年度平均年間線量率
1983年(mSv/年)

高汚染
1,100人
525
平均
10,000人
72.9


高放射線マンション約10,000人の住民における19年間のがん死亡

台北付近における
がん死亡率からの予測値

放射線レベルの高いことを
考慮にいてた予測値(ICRP)

実際に発生した
がん死亡者
206人
270人
7人

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