3,1990年版勧告からの主な変更点

 
 ICRPの主な目標は、人間に対して、また最近では明らかに他の生物種に対しても防護の適切な基準を確立し、適用することに貢献し続けている。これは望ましい人間の行為や放射線被ばくを惹き起こしたり、増加させたりするような生活様式を不当に制限することなく達成されるべきである。

 この目標は、健康リスクなどの科学的データのみに基づいては達成されるものではない。目標には、社会学的な考慮も加えなければならない。また、倫理的、経済的側面も考慮しなければならない。放射線防護に係わりをもつ人は誰でも、様々なリスクの相対的重要性、リスクと便益のバランスについて価値判断を行わなくてはならない。この点においては、放射線防護に関わる人は危機管理に関わる他分野の人と同じ立場にある。新たな勧告はこの点を明確に認識する必要がある。

 人間活動によって被ばくを回避したり限定したりできる場合には、被ばくを受ける個人に対して、あるいは社会全体に対して、適切な最小限の基本的防護基準を設定する必要がある。リスクの少ない少量の被ばくに対しても、効果的で合理的に達成可能な手段がある場合には、さらに高度な防護のための手段を講じる一層の義務がある。このように、現在主として単一線源からの個人の防護強調されているが、引き続き一般の環境の下で利用可能な最的な防護レベルを達成する必要性がある。

 これを達成するために、拘束値に対する現在の考え方を拡大し、単一線源に対する最適化プロセスのレベルを決める状況範囲をも対象とするよう提案が出されている。単一線源からの防護の最適化には、線源の設計、線源から個人の受ける線量までの経路の変更、これらのいずれかまたは両方が関係してくる。これらが導入された場合、介入レベル、対策レベルなどの用語は不要になるかもしれない。その理由は、拘束値、クリアランスレベル、免除レベル、職業人および公衆への線量限度などという、介入状況を個別に区別する必要がなくなるかもしれないからである。

 実効線量の定義に関しては、放射線と組織荷重係数に改定が行われるだろう。自然放射線被ばくに対する整合性のある考え方が確立され、状況に対する放射線防護の明確な方針が導入されることになろう。

    

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