Myron Pollycove, M.D. (米)
カリフォルニア大学名誉教授
米国原子力規制委員会医学顧問

Ludwig. E. Feinendegen, M.D.(独)
元西ドイツユーリッヒ研究所長

要 旨

 エネルギー代謝にともなって生成する活性酸素(ROS)は細胞の遺伝子に膨大な数の傷害を与えているが、生体の様々な防御機能が遺伝子の変異を防いでいる。最近の研究では、低線量放射線照射(バックグランドレベルの10-100倍)によりそれらの防御機能(活性酸素の消去、DNAの修復、傷害を受けた細胞の除去など)が活性化されることがわかってきた。放射線が生成する活性酸素がこれらの「放射線ホルミシス」−低線量の放射線を受けた人々のがんを含む病気による死亡率の低下−に関与している。また、低線量放射線照射は、免疫機能の活性化がネズミ類やヒトにおけるがんの除去や転移の抑制をもたらす。

 

緒 言

 放射線防護の主眼は、できるだけ放射線レベルを低くすることによってDNAを護ることとされている。これは、荷電粒子が生体を通過する際にがん化に結びつく遺伝子変異を引きおこし、その数はどんなに少量の放射線であっても、線量に直線的に比例して増加するという生物物理学の考え方に基づいている。しかし、この直線仮説(LNT仮説)に反する現象が少なからず報告されている。

    

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