ラドン温泉が種々の疾患に対して有効であることは、さまざまな調査でわかっていたが、なぜ効くかは不明だった。最近、低線量の放射線を用いた実験から、その謎を解くヒントがみつかりはじめている。

 

はじめに

 放射線といって思い浮かぶのは、原子爆弾か原子力発電所、最近では茨城県東海村での臨界事故(本誌1999年12月号参照)からくる放射線障害の暗いイメージであろうか。放射線は姿、形が見えず、臭いや音もないので、よけいに不気味な存在なのかもしれない。他方、たとえば、ラドン(放射能)温泉は不老長寿の湯ともいわれ、昔から多くの患者が治療に利用している。ここでは、後者の生体にとって有益とも考えられる低線量放射線の不思議な生体作用の側面について考えてみたい。なお、ここでは高線量を吸収線量で1グレイ(Gy)以上、低線量を1Gy未満とする。(放射線から吸収したエネルギーが物質1s当たり1ジュール(J)のとき、1Gyという。)

    

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