Berrington, A., Darby, S.C., Weiss, H.A., Doll, R.

 

 要 約

 
 放射線科医と放射線治療士は放射線利用の初期の頃に職業的に放射線被ばくした集団の一つであり、彼らの死亡率パターンは長期の断続的外部被ばくの影響についての知見を提供する。1897年から1979年の間に放射線医師学会に登録した英国の放射線科医について1997年1月まで追跡調査し、初めて放射線防護の勧告が公表された1920年以降の登録医における死亡率を検討した。

 1920年以降に登録した放射線科医のがんによる死亡率はすべての臨床医の死亡率と同じであったが、登録後40年間以上にわたって従事した医師の場合のがん死亡リスクは41%の増加を示した。これはおそらく1921-1954の間に登録した医師の放射線長期被ばくの影響が現れたためであろう。

 一方、1954年以降に登録した医師のがん死亡率の増加は認められなかった。これは被ばく線量が低いためと考えられる。またがん以外の病気による死亡率についてもこれまでより詳細な調査を行った。調査の対象となった放射線科医の被ばく線量は、日本の原爆生存者の場合には2倍以上の死亡率の増加をもたらす線量であるにもかかわらず、初期の(1920年以前の)登録医を含めて、がん以外の病気による死亡率の増加は見られなかった。

 

 背 景

 
 放射線と発がんの関連を検討する際、高線量の急性被はくのデータは重要だが、低線量の繰り返し(慢性)長期被ばくに適用できるかどうかは判らない。この意味で放射線科の医師のデータは非常に重要な知見を与えるだろう。放射線科医の蓄積被ばく線量は、放射線が利用されるようになった初期の頃にはかなりのものになるだろうが、最近でははるかに小さくなっている。

 

 用 語


SMR
(standardized mortality ratio:標準化死亡比)
ある特定の集団で実際に観察された死亡数を、標準集団と同じように死亡したと仮定した場合の(期待)死亡数で割ったもの。表中0はObserved(観測死亡数)、EはExpected(期待死亡数)でSMRはO/Eで計算される。この論文の中では標準集団を一般人、社会階層1の男性、男性臨床医としている。

コホート
ある期間にわたって死亡率などを追跡調査する特定の集団。

Healthy worker effect(健康労働者効果)
病気や障害の重い人は通常職に就きにくいために、労働者の全体的な死亡率が一般人口のそれよりも低くなる現象である。したがって、一般人口の死亡率を比較の対照として用いる場合、この影響を考慮する必要がある。

    

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