1. ラドン療法の適応症とその条件


1) ラドン療法の適応症

 欧州において最も古く、医学的評価の高い幾つかの温泉には、鉱泉中にラドン(222Rn)が有効成分として多く含まれていることがわかっている。この含有ラドン濃度が高め(300-3000Bq/l)の温泉では、世界的に見て、おおむね表1のような適応症のあることが報告されている。たとえば、ハイルシュトーレンでラドン療法を受けている患者の疾患別分布状況は、ベヒテレフ病(Morbus Bechterew、強直性脊椎炎;脊椎の非細菌性炎症)、慢性間接リウマチ、変形性脊椎症、変形性関節症、気管支喘息の順に多い。

 このうち、ベヒテレフ病患者の70%に、治療後6カ月間で軽減効果が認められている。この他にも、治癒不良の傾向のある疾患(例;下腿潰瘍、歯周症)、内分泌系に関わる合併症、更年期障害、不妊などがあり、このような幅広い範囲の症状に一つのラドン療法だけで処方されていることは、驚くべきこととされている。

表1 ラドン療法の主な適応症2)

ベネテレフ病(強直性脊椎炎)
慢性多発性関節炎(慢性間接リウマチなど)
変形性脊椎症
変形性関節症
気管支喘息
アトピー性皮膚炎
神経痛、慢性神経炎
歩行系損傷後のリハビリ(筋肉疾患など)
老人性疾患


2) ラドン療法の条件
 ハイルシュトーレンのラドン療法坑道の関連施設には、診察室、検査室、リハビリ室、研究室などがあり、クワハウスと呼ばれている。外来診療しかせず、患者はバードガスタインのホテルなどに宿泊して、送迎バスなどで通院する。実際の治療は、長さ約3qの坑道内へトロッコに乗って入り、症状に応じ、途中4ヶ所にある治療室のうち1ヵ所で約40分間、ベットに横臥するだけである。坑道治療回数は処方に従って、3〜4週間、隔日に9〜12回のペースで行われている。

 治療室内の環境条件は、おおむねラドン濃度が166,500Bq/m3(これは約2mSv/hrと換算され、治療1回の被爆線量は自然放射線の年間被爆線量に相当する)、温度が37‐41.5℃、湿度が70‐95%である。このうち、ラドン濃度に関しては、三朝温泉の浴室は、54Bq/m3、岡山大学三朝分院の熱気浴室は2,080Bq/m3であり、後者の約80倍も高い3)。なお、高温・多湿の環境が治療効果をもたらす一つの因子と考えられている。

    

ホームページに関するご意見・ご感想をこちらまでお寄せ下さい。
メールアドレス:rah@iips.co.jp