3. ラドン療法の臨床医学的研究

 
 最近の臨床研究に目を向ければ、ラドン療法がベヒテレフ病、頚部痛、慢性多発性関節炎などに有効であることが科学的に明らかにされつつある。その例を紹介する。

1) ナチュラルキラー活性などに着目した試験
 ベヒテレフ病患者では、DNAの合成速度が増加する一方、DNA修復機構が一部阻害されているため、DNA構造のエラーが長時間持続している。しかし、ラドン療法により、これらの指標の値はともに正常値に近づくことが明らかになった9)。また、ラドン療法により、当該患者のナチュラルキラー(NK)細胞の活性が高まることも明らかになった10)。さらに、ラドン吸入によりモルヒネ受容体と結合してモルヒネ様作用を発現するβエンドルフィンが誘導することなどに、研究者は注目している。

2) 顔面筋の圧点に着目した二重盲検試験
 頸部痛や頸椎の変形を生じていた患者46例を対象に、ラドン吸入群と対照群(プラセボ群)に無作為に分け、両群の患者を水温37℃の浴槽に3週間・9回入浴させ、その後の治療効果を調べた。ラドン吸入群の浴槽のラドン濃度は3kBq/lとした。その際、顔面筋の典型的な16ヵ所の圧点に痛みを引き起こすのに必要な最小圧力を圧力閾値計を用いて測定した。その結果、治療期間中には、ラドン吸入群・対照群ともに痛みの減少や体調の点で、ほぼ同じ程度の改善が認められた。しかし、治療終了後から対照群では、これらの指標は次第に悪化を意味する値を示した。対照的にラドン吸入群では測定した指標がすべて改善を示す値を維持した(図5)11)。この知見は、ラドン温泉で一般的に認められる現象と一致するものであり、ラドンにより最高の効能を示すのは通常温泉の利用を終了してから、ある程度の時間が経過したときであることを示す。

 同様の試験条件で、頚部、あるいは腰部脊柱に脊椎分離症や骨関節症の認められる患者52例についても検討された。その結果、ラドン濃度が800Bq/lと相対的に低かったにもかかわらず、ラドン吸入群は有意な一過性の改善が認められた12)

3) 自覚症状および鎮痛剤の消費量に着目した二重盲検試験
 ベヒテレフ病患者262例に対し、まず、総合的なリハビリテーションプログラムを施した。その後、これらの患者のうち、ラドン吸入群として144例を無作為に抽出し、空気中ラドン濃度が平均75kBq/m3であるラドン室において治療を1日40分・9日間施した。その結果、4週間の治療機関が終了した時点では、ラドン吸入群・対照群(プラセボ群)ともに典型的なベヒテレフ痛が緩和していることが認められた。しかし、3カ月後には、ラドン吸入群の方が平均して痛みの緩和が良好であり、この効果が12ヵ月後まで持続した13)

 本試験について、鎮痛剤である非ステロイド系坑リウマチ剤の使用量も同じようなパターンをたどった。リハビリテーションを施している間に、ラドン吸入群・対照群ともに鎮痛剤の使用量が低下した。しかし、ラドンを吸入することで、この使用量の低下がその後12ヵ月間も持続した(図6)。これより、鎮痛剤がときに重篤な副作用を招くことがあるが、ラドン療法による副作用は一例も報告されていないことから、重篤なリウマチ疾患にラドン療法を行うことは価値の高い臨床的手段であるように考えられている。13)

4) その他
 インスブルック大学ラドン療法生理学鉱泉学研究所では、気管支喘息についても肺活量については有意差はないが、平均呼気流量や25%呼気流量を指標にすると有意差が認められ、相当の改善のあることを明らかにしている 14)。一方、ラドン療法に伴うラドンが肺機能に及ぼす影響について、ベヒテレフ病患者100名に対し治癒前後の変化を検討した結果、有意な変化のないことも明らかにしている 15)

 

    

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