3-2染色体


 前の報告では、学生では安定型の異常が、高齢婦人では安定型、不安定型共に高放射線地域で増加していると報告しました。この点はいろいろと議論のあるところなので、改めて放医研で早田博士によって開発された最新の技術を導入して、数についても十分な細胞を分析することにしました。また線量の推定を容易にするために、同一家族で三世帯そろった方を中心に分析しました。良い標本を作る為に現地に近い街の病院の一室をかり設備一式を日本から送り染色体標本作製用の研究室を作りました。勿論研究者の研修も何度も念を入れて行うと共に、同じ標本を中国で見たものをまた日本で再検討するというようにデータの信頼性を保つことに細心の注意を払いました。



 こうして得られた新たな結論は、
1)不安定型異常は高線量地域では年齢と共に有意に増加し(図1)、蓄積線量に比例する(図2)。2)安定型異常は年齢による増加は認められるが、放射線による増加は認められない(図3)。
 なお安定型の方は1998年までのものは必ずしもデータが十分ではありませんが、その後のデータもこれを補うものでこそあれ、これから逸脱するものではありません。
 
 このことの一応の解釈は、不安定型異常を持った細胞はやがて消滅の運命にあるので問題なく、体内に残ってがんに繋がりうる可能性の考えられる安定型異常が増えないということは、次に述べるがんの増加が認められないということと矛盾しないと言えます。しかし、これを不安定型異常の増加があるということは低線量でもDNAの切断が起こっている証拠であると考えると、それとがんの増加がないということは矛盾しているとも言えなくはありません。この問題は残された課題として現在追及中です。

 





    

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