岡山大学医学部 山岡 聖典

目 的

 温泉には「化学効果」、「温熱効果」、および「放射能効果」の三つの効果があり、比較検討することは重要である。今回は化学効果(化学成分)を同じにし、血液中の活性酸素関連物質を指標に健常者に対しては温熱効果と放射能(ラドン)効果の比較を、患者に対してはその治療効果に関し、それぞれラドン吸入1週間における変化特性の検討を行った。

方 法

 健常者を岡山大三朝分院ラドン高濃度熱気浴室(室温36℃、ラドン濃度2,080Bq/m3、同地区一般サウナ浴室の約40倍、ラドン群)と同地区一般サウナ浴室(48℃、温熱群)とに分け,1日1回40分間を1週間,高湿度下で吸入実験を行った。また、患者に対し前者浴室(42℃)において同様の実験を行った。それぞれの吸入後に採血し試料に供するとともに、実験前の採血も行い対照用試料とした。指標の分析は定法に従った。

結 果

  1. SOD活性は1日目、対照に比べラドン群は有意に約10%増加したが、温熱群は有意な変化をしなかった。2、3日目、両群共に前日に比べ減少傾向を示した。6、 7日目はラドン群は約35%有意に増加し、温熱群も約15%であったが有意に増加した。
  1. 過酸化脂質量とLDL-コレスレロール量はそれぞれ、2日目、ラドン群は有意に約10%減少したが、温熱群は有意な変化を示さなかった。3日目は、両群共に前日に比べ増加傾向を示した。6、7 日目は、ラドン群は約25〜20%有意に減少し、温熱群も約10〜12%であったが有意に減少した。
  1. 患者について、1週間でSOD 活性は約20%有意に増加し、過酸化脂質量とLDL-コレステロール量は約18〜15%有意に減少した。

考 察

  1. 温熱群におけるSOD 活性の増加は、heat shock proteinによるもと考えられる。
  1. 3日目においてSOD 活性の減少、過酸化脂質量とLDL-コレステロール量の増加の傾向を示したのは、毎日吸入に伴う軽度の「湯あたり」症状と考えられる。4、5日目に吸入実験を休んだ結果、6、7日目にSOD 活性が増加し過酸化脂質量とLDL-コレステロール量が減少したが、これはラドン療法は隔日に行うとよいことを支持する。
  1. 6、7日目の現象が温熱群に比べラドン群の方が概ね2倍大きかったが、これは温熱効果よりラドン効果の方が抗酸化機能の亢進とその効果が大きいことを示す。
  1. 動脈硬化などに関与する過酸化脂質量やLDL-コレステロール量が減少するとの所見は、活性酸素病を多く含むラドン温泉適応症の機構解明を行う上で有益であった。
    

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