目 的

 ラドン療法の適応症には変形性関節症など多くの疾患がある。この機構の解明については未だ不明な点があり、特にヒトを対象とした研究は少ない。適応症の多くが活性酸素に関与していることを踏まえ、今回、変形性関節症患者の血液中の免疫機能、抗酸化機能、活性酸素病関連指標などに着目し、ラドン高濃度熱気浴反復治療に伴う変化特性を検討した。

方 法

 変形性関節症患者に対し、本学三朝医療センター・ラドン高濃度熱気浴室(ラドン濃度2,080Bq/m3、室温42℃)において1日1回40分、75%の高湿度下の治療を隔日に施した。1回目治療後、治療開始2、4、および6週間目のそれぞれの治療後に採血し、試料に供した。また、比較のため健常者に対しても同様の処置を施すとともに、両者それぞれの1回目治療前の採血も行い、対照用試料とした。試料の分析は定法に従った。

結果と考察

  1. 本治療を受けた変形性関節症患者において、PHA 幼若化反応に有意な変化を示さなかったが、ConA幼若化反応とCD4*CD8 はともに有意に増加したことから、ラドン吸入が免疫促進的に作用することがわかった。
  1. 抗酸化系酵素であるSOD とCat の両活性とtotal GSH 量がともに有意に増加し、組織障害や血管に関する疾患の原因となるLDL-コレステロールは有意な変化は示さなかったが、total コレステロール量と過酸化脂質量は有意に減少した。これより、ラドン吸入が抗酸化機能を亢進させ、酸化傷害を緩和させる可能性が示唆できた。
  1. 尿酸量に有意な変化は認められなかったが、モルヒネ受容体と特異的に結合し、モルヒネ様作用を発現する内因性ペプチドであり、神経末端から分泌され、痛覚の制御に関与するβ-endorphinの値と抗炎症作用などを示す糖質コルチコイドの産生を促すACTHの値がともに有意に増加した。これより、ラドン吸入が疼痛の寛解に関与していることがわかった。
  1. 毛細血管・細動脈を収縮させ血圧上昇作用を示すvasopression値が有意に減少し、血管拡張作用を示すα-ANP値が有意に増加したことから、ラドン吸入が組織循環を促進する作用のあることが示唆できた。
  1. 以上の現象は治療開始4週間後を中心に認められたが、この所見はラドン療法の臨床効果が3〜4週間目で飽和することとを支持する。
    

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