目 的

 ラドン療法の適応症には気管支喘息など多くの疾患がある。この機構の解明については未だ不明な点があり、特にヒトを対象とした研究は少ない。適応症の多くが免疫機能および活性酸素に関与していることを踏まえ、今回気管支喘息節症患者の血液中の免疫機能、抗酸化機能、活性酸素病関連指標などに着目し、ラドン高濃度熱気浴反復治療に伴う変化特性を検討した。

方 法

 気管支喘息患者に対し、本学三朝医療センター・ラドン高濃度熱気浴室(ラドン濃度;2,080Bq/m3、室温;42℃)において1日1回40分75%の高湿度下の治療を隔日に施した。1回目治療後、治療開始2、4、および6週間目のそれぞれの治療後に採血し試料に供した。また比較のため健常者に対しても同様の処置を施すとともに、両者それぞれの1回目治療前の採血も行い、対照用試料とした。試料の分析は定法に従った。

結果と考察

  1. 本治療を受けた気管支喘息患者において,PHA 幼若化反応に有意な変化を示さなかったが、ConA幼若化反応は有意に増加した。また有意ではないもののCD4陽性細胞の減少、CD8陽性細胞の増加の傾向がみられた。一方、健常者ではConA幼若化反応とともにCD4陽性細胞は有意に増加した。このことから、健常者と異なり喘息患者においてはラドン吸入が免疫抑制的に作用する可能性が示唆された。
  1. 抗酸化系酵素であるSOD 活性およびCat 活性は有意に増加した。LDL-コレステロールおよびtotalコレステロール量は有意な変化は示さなかったが、過酸化脂質量は有意に減少した。これより、ラドン吸入が抗酸化機能を亢進させ酸化傷害を緩和させる可能性が示唆できた。
  1. 糖質コルチコイドは抗炎症作用を有し、気管支喘息の治療にも使用されている。その糖質コルチコイド゙の産生を促すACTHの値がラドン吸入によって有意に増加したことから、ラドン吸入が喘息における気道炎症を改善する可能性が示唆された。
  1. ケミカルメディエーターの一つであり、主に喘息即時型反応初期の気管支攣縮に関与しているヒスタミン値が有意に減少しており、ラドン吸入が気管支攣縮を抑制しうる可能性が示唆できた。
  1. 以上の現象は治療開始4週間後を中心に認められたが,この所見はラドン療法の臨床効果が3〜4週間目で飽和することとを支持する。
    

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